雪白の月

act 4


―ピッ―

「石川だ。」
「池上です。Wゲート捜索終了しました。異常ありません。」
「解った。続けて巡回・警備を。」
「了解です。…あの、岩瀬さんは…?」
「…まだ、連絡がない…」
「岩瀬さんなら大丈夫ですよ!」
「…あぁ…そうだな…。」
「…警備続けます。」
「あぁ…。頼む。」

そう言って池上からの交信は切れた。
石川は目を閉じ… 『大丈夫だ…大丈夫だ…』 と自身に暗示をかけるように心の中で呟く…
実際、自分が隊長でなければ今すぐにでも岩瀬の下へ駆けつけたい。
だが。
自分は警備隊の隊長で。この場を離れることも出来ず…
ただ、岩瀬の無事を願うだけ… だった。 そんな石川の様子に西脇は―

「…隊長…。ご気分が悪ければDrの処に…」
「大丈夫だ。」

即答する石川に西脇は…

『全然、大丈夫そうでないんだが…?』

しかし、こうなった石川の心を変えれるのは誰もいなく…溜め息と共に西脇は説得を諦める。
そして…

『早く目覚めろ。岩瀬…』 岩瀬の回復を切に願う…。

そんな西脇の思いも知らず、石川は顔色悪く仕事に没頭していった…


―ピッ―


「石川だ。」
「三舟です。内藤さんから連絡です。」
「解った。直ぐに帰る。」
「了解。」

無線を切り、石川は西脇を見て

「これから中央管理室へ戻る。後は頼んだ。」
「お一人で行動されるのですか?」

西脇の鋭い突っ込みに石川は苦笑した…

「中央に戻るだけで、SPはいらないだろう?」
「そうですか?」
「だいたい、手の空いている人間がいないだろう?」
「アレクでも呼べば…」
「一人で大丈夫だ!」
「隊長…」
「西脇…。心配してくれるのはありがたいが。大丈夫だよ。」

そういい残し石川は中央管理室へと戻って行った…


「石川…。本当に『大丈夫』な人間はそんな笑い方をしないんだ…」

西脇の苦々しい呟きは石川に届くことなく… 夜空へと消えていった―



     + + +



中央管理室へと戻る途中。石川は 不意に、背筋が寒くなった


『岩瀬…。お前がいないだけで、こんなにも寒いんだ… 俺はお前を得て、強くなったのか…それとも…』


岩瀬の不在は自分が思っているよりも大きく…
そして、隊に及ぼす影響の大きさに驚いた。

『こんなのじゃダメだ…! そのうち岩瀬も俺もダメになる…。だったら!』


石川の悲壮な思いに答えるものは無く…
議事堂の暗闇だけが広がっていた―








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